「シャーロック・ホームズの冒険」、ワトソンになりたいという話

シャーロック・ホームズ推理小説ではないと思っている。あえて言うなら探偵小説か。だって、どう足掻いても与えられた情報だけでは読者には推理できない。

 

それでもシャーロック・ホームズに惹かれるのは、その在り方なんだろう。

 

不遜な物言いをするけれど、これまで、偏差値だけを見れば「賢い方」として生きてきた。だからか、知性を絶対視するきらいがある。

 

畏怖し、心酔し、すべてをなげうってもいいと思える相手をどこかで探している。なにをどう頑張っても敵わない相手、軽々と人々の頭上を歩く人。シャーロック・ホームズはその象徴だったし、わたしはずっとワトソンを羨ましがっている。

 

ホームズは地球が自転することさえ知らない。だって彼には必要ないからだ。謎を解くためだけに彼は知識を蓄え、感性を鋭く研ぎ澄ます。その圧倒的な在り方!誰にも真似なんか出来はしない。

 

 

シャーロック・ホームズの冒険 (新潮文庫)

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