大森靖子は神様だった

大森靖子は神様だった。

息をするのも苦しかった高校時代、いつも大森靖子を聴きながら坂を登っていた。「死神」「VOID」「きもいかわ」「流星ヘブン」「マジックミラー」「君に届くな」...

「新作とかもうでなきゃいいのに 変わらない私が 古くなっていくみたい」
「笑わなくっても余裕で天使さ」
「見た目とか体裁とかどうでもいいっていって抱きしめてよ」
「助けて っつって誰もこなくても平気さ ぼくはぼくを守るもの」

親と折り合いの悪くなったわたしは、許容に飢えていて、すがれる何かを探していて、だからわたしたちをまとめて抱きしめてくれる靖子ちゃんの曲は光にも等しかった。たぶん同じような女の子はたくさんいたと思う。私だけの私を、わたしだけの可愛いを、わたしだけの生を肯定したくて、イヤホンの内側に閉じこもるようにして聴いた歌の数々。

だからZOCができた時も嬉しかった。いっそう新しいなにかが生まれるのだと思った。Family Nameは飽きるほどに聴いた。嘘だ。聴いても聴いても飽きなかった。かてぃちゃんの全身の力を振り絞るような「クッソ生きてやる」に涙がこぼれた。靖子ちゃんの音楽が変わらずそこにあった。

でもだんだん何かがおかしくなった。

family nameができる前。フィンちゃんがいなくなった。SNSで悪し様に罵るメンバーの姿にほんの少し怖くなった。フィンちゃんの孤独は孤立するのかと思った。

さやぴが辞めた。正直かばいようはないと思っている。

かなのちゃんが辞めた。靖子ちゃんのブログと、公式のお知らせに思わず顔をしかめた。かなのちゃんは「卒業」だった。それなら、裏側なんて、匂わせるべきではなかった。大森靖子という一人のアーティストと、アイドルはまったくあり方が違うのだ。アイドルは夢を与える人たちで、裏で何を思っていても、どんなに揉めていても、表には笑顔を見せるものなんじゃないか。

靖子ちゃんはTwitterをおやすみしている。Twitterはまだまだ荒れている。かなのちゃんにはストーリーの画像をもとに薬物の疑惑までかかりはじめて、西井は真偽もわからない不倫疑惑をリークされて、混沌と化している。

靖子ちゃんはファンに愛を与えてくれる人だと思っていた。その両腕で大きなものを抱きしめてくれる人だと思っていた。いつのまにか、その腕の中にはZOCしかいなくなったのかもしれない、とおもいはじめている。


たぶん神様は死んだ。