年下の男の子

年下の男の子と寝た。多分私に好意を寄せていて、でもひねくれ者の私は、その好意の底にある「年上の女への性欲/年上に好かれる自分への自信」みたいなものをひっそり嗅ぎつけてふぅん、と思っていた。

安くて別に旨くはないチェーンの居酒屋を出て、明日の予定を聞かれた。まだ帰りたくない、と強請るやり方は、私がいつも使うと話した手口だったと、後からその子に言われて気づいた。ホテルを探したのは私だった。だって相手は年下だったから。何かを決めてもらうことに甘んじることができる、年下のそういう特権を男の人に使われるのは好きじゃない。別にそれは男だから、女だから、という一般論じゃなくて、ただ私が全部任せて預けてくる男の人に性的魅力を感じないというだけの話だ。

それでも、ちょうど好きな人相手にボロボロになっていたところだったので、適当に悪くない相手と適当にセックスがしたかったから寝ることに決めた。

今まで、あまり経験がない相手とセックスをしたことがなかった。そもそも恋人と続かないので恋人とセックスをしたことがあまりないし、遊ぶときはセックスに慣れている人を当然選ぶ。慣れている相手に教えてもらうのが好きだ。フェラチオのやり方も、ゴムの付け方も、乳首の舐め方も、みんな男の人に習った。

一度だけ経験のない男の子と寝たことがあるけれど、その子は素直でセンスがよかった。やんわりとリードすればその通りに動いて、女の反応をよく見て、正しく腰を動かせる子だった。

あんまり経験がない、とは聞いていた。素直にリードされてくれればいいな、と思った。一度だけ寝た童貞の男の子との一晩はそれなりに良い思い出だったので、そう悪くはないだろうと高を括っていた。ホテルの部屋に入るまで。

入って荷物を置き、コートを掛けるなり、後ろから乱暴に抱きすくめられてあーあ、と思った。こういうタイプ。ガサツに服を乱していく腕をぼんやりと見る。荒っぽい動作に透ける幼さと経験の浅さを可愛いと思えるほど、私はそもそも年下が好きなわけじゃない。
やたらとイカせたがったり、お酒を飲んでいるせいか勃ちも悪いから入ってる感じがしないし、腰の振り方も下手だし、事後すぐに触ってきたり、そういういろんなことで少しずつ脳の中心が冷めていく。フェラの姿勢はよく考えて欲しい。その体勢じゃ私は舐めにくいの、わかる?いじめられるのも意地悪を言われるのも好きだけど、私がご飯を奢ってあげるような年下に言われても別に興奮しない。

天井を眺めて好きな人に会いたいな、と思った。可愛いとも好きだとも言ってくれなくていいから、ピロートークもいらないし終わるなり背を向けて眠ってくれていいから、あの人と寝たかった。