亡骸を愛する話、「ELLEGARDEN」
気がつけば人に伝える言葉ばかり考えている。来月誕生日を迎える友人へのメッセージ、溜まっているLINEの返信。そんなものがくるくるくるくる脳内をかけめぐって何処かへ行ってくれない。暇さえあればくるくるくる。
多分世界と繋がりたいのだ。世界とつながる手筈をいつも考える。けれどどうにも人と接するには心の強度が足りなくて、最後には読書に行き着く。
本はいつも私のシェルターだった。強制的に今いる世界から切り離してくれるもの。ファンタジーが特に好きだ。決して行けないとわかってるから、触れられないから好きだ。
触れられないというのは諦めがつくことと同義で、決して手が届かないとわかっているから安心して眺められる。本もそうだし、もう活動休止したバンドもそう。時が止まっているものに一方的に関わることが好きだ。
ELLEGARDENは私にとってそういうバンドだった。息を吹き返さないもの。音楽を抱えて時を止めた死体だった。更新されないYouTube。リリースされないCD。だから安心して愛することができた。
そうしてずっと愛していたから、生き返った今もおずおずと愛せる。
結局、反応が怖いのだ。愛を拒絶されること。愛するものに愛されないこと。分不相応だと笑われること。だから友人が怖い、死体を愛する。
生者の抱くものに永遠はない。永遠の愛も永遠の友情もない。不変でないものなど要らないのだ。いつかは失われるものに意味などない。人は変わっていく。諸行無常。色は匂へど花は散る。本もCDも朽ちていく。わかっている。わかっていてなお、変わらないものを探している。亡骸を抱えている。
「ヤングアダルト」、リストカットの話
夜を越えるための唄が死なないように
手首からもう涙が流れないようにマカロニえんぴつ「ヤングアダルト」
一度だけ手首を切った。
たしか親と言い争った日だった。たぶん高校生か中学の終わりで、中学一年性の希死念慮に囚われていたときのことを「頭がおかしかったとき」と称されて、どんなに言葉を尽くしても理解されない過去の絶望に震えが止まらなくなった。自分の部屋に駆け込んでも、手も足も小刻みに震え続けていて、追い詰められてカッターを手に取った。なんとかして、手足の感覚を取り戻したかった。自分の意識とは裏腹に震える四肢が怖くてたまらなかった。
刃のあとを追うように線が生まれて、ゆっくりと滲む赤にようやくほっとした。ゆっくりと震えはおさまった。大丈夫だ、と思った。わたしは生きている。わたしは誰よりも自分が生きていることが許せなくて、同時に誰よりも許したかった。
涙を流すのは、誰かに気づいてもらいたいからだと思っている。手首から流れる涙はSOSだ。気づいて欲しい。助けて欲しい。すくわれたかった。
母が手首の涙の跡に気づくことはなかった。
「踊ってばかりの国」、好奇心がとどまるところを知らない話
踊ってばかりの国は、サイケデリックロックンロールに分類されるらしいと知ったのは昨日のことだ。
サイケデリック・ロックは、1960年代後半に発生し流行したロック音楽の派生ジャンル。主に、LSDなどのドラッグによる幻覚を、ロックとして再現した音楽のことを指す。 ウィキペディア
なるほど、彼等の曲の持つ妙な陶酔感はそういうわけかと腑に落ちた。どこかノスタルジックでしかしユートピアを感じさせる音楽は、昨年出会ったお気に入りである。
にしても、ドラッグ。ドラッグに興味がないわけではない。けれど法律を犯すつもりもない。どうしても興味に耐えきれなくなったらオランダのコーヒーショップにでも行こうと思っている。国が変われば、善悪の線引きが変わるのだから不思議な話だと思う。
好奇心とか興味とかいう代物には昔から手を焼いていて、小学生の時の塩酸を舐めてみたい衝動だとか、髪の毛は燃えるのかの実験だとか、よくもまぁこの年まで何事もなく生きてこられたものだと思う。幸い大きな怪我もなく、あえていうなら計3本骨を折ったぐらいで。
この好奇心というものは、危険の導火線であると同時にわたしの知識欲の根本にもなっていてどうにも手放せない。手放したいと思ってお別れできるものでもないのだけれど。
ここのところのその好奇心の向かう先は冒頭のバンドである。踊ってばかりの国。このブログのタイトルのもじり元だ。
彼等は往々にしてバンドがそうであるようにメンバーの脱退と加入を繰り返していて、初期のメンバーと今のメンバーがそっくり違うらしい。初期の踊ってばかりの国と今の踊ってばかりの国は、果たして同じバンドと言い得るのだろうか。
細かいことは置いておいて、お気に入りの曲がある。いくつもある。「青いピアス」はその1つだ。ボーカル曰く、パートナーさんへのラブソングだという。
優しくふたりの思い出をなぞっていく歌詞が穏やかで、優しい。
夜は酒を飲んで レコード回して
君は僕に 夜の越え方授けてくれた
春の夜はまだ長くて、ひとりではどうにも越えがたいから、踊ってばかりの国を聴いている。
アーバンギャルドを聴きながら死にたい "平成死亡遊戯"
some life の2nd albumが最高だったから全人類聞いてほしい
some lifeというバンドを知っているだろうか。
忘れもしない'17未確認フェスティバル。あのステージを見て以来彼らの虜である。
なにせエモい。エモい。あまりにもエモい。
見た目に反してボーカルの声は優しい。歌詞もなんとはなしに優しい。大きなことを語るわけじゃないけれど、等身大で、優しい。
アルバムの六曲目「stand by me」の歌詞が好きだった。
どんなに悲しくても僕達は腹が減るし どんなに楽しくても僕達は眠らないとな
愛おしいと思った。他の曲も心底良かった。google playのストリーミング契約はしてるけれどもタワレコまで買いに行った。満足だ。大満足。
18歳、私の青春はsome lifeとELLEGARDENの音で彩られている。
アルバムの7曲目、笑ってしまった。そういうところも好き。