去年の誕生日の話

誕生日が好きだった。こんな歳まで生きてきて偉い、と自分を褒められるので。14の誕生日には死にたかった。毎年、生を選んできた1年を振り返り自分を褒める。また1年重ねていこうと心に決める。

去年の誕生日には棘が刺さった。いまだに抜けない棘が。

友人たちの祝福と、行きつけのショップのクーポン券で始まった1日に水を差したのは母親の一言だった。
「産んであげたお母さんに感謝はないの?」
祝福の1つもなしに、疲れた顔に少しの悪意を滲ませて言い放たれ、喉が締まった。なんとかえせばいいのかもわからずに口を開けて、閉じた。ありきたりな、しかし明確な意図を秘めた一言だった。彼女はわたしを傷つけようとしていた。

今年の誕生日を迎えるのは少し怖い。去年のシーンが再び繰り返されたら、今度こそわたしは彼女を愛せなくなってしまう。