女同士だから幸せにできない、

と思った。だからなにも言えなかった。

中高一貫の女子校に通った6年間で2回、中1のときと高3のときに好きな女の子がいた。

中1の頃好きになったのは先輩だった。ただの憧れだと思っていた。
部活中に目で追った。貧血がちのわたしの様子を見に来て目の前にしゃがみこんだ瞬間、全身の血管が膨張したと思った。ぶわ、となにかが広がって、好きなのだと知った。罪悪感が広がった。彼女からは制汗剤と湿布の匂いがした。

こんなのよくない、と思った。

夜、布団の中で下半身に手を伸ばした。朝起きたとき、脚に絡みついていたパジャマのズボンを履き直しながら死にたくなった。誰にも知られてはいけなかった。誰に教える気もなかった。

高3のときには同級生を好きになった。初めは友達になりたい、それだけだった。人見知りな彼女に度々話しかけ、駅で会ったときに笑いかけてくれるようになったときには跳びはねたいほど嬉しかった。向こうからからかうように話しかけられたとき、思わずにやけた。

高3の終わりにふと気づいた。彼女が好きだった。

高校に入ってクィアについて勉強を重ねていた。同性婚は認められるべきだし、どんな形の恋も愛も尊いものだと考えていた
でも、私の中の恋心だけはどうやったって認められなかった。同窓会で会う程度の仲だったとしても、私は彼女の中で綺麗な思い出になりたかった。

嫌われたくなかった。

万が一、万が一受けいれられたとしても。この国において異性愛者であったほうが暮らしやすいことなんてわかっている。身近な人にもなかなかカミングアウトできない。理解し合うことは、いつだって難しい。

わたしの好きなあの子を、こんな絶望に巻き込んではいけなかった。

この恋を、ただの気の迷いだと片付けてしまえる日をわたしは待ち望んでいる。

もう深夜に泣きたくない。