あとは夢を見るだけ

今日は1日うつらうつらしていた。どうも腹と胃の調子が悪く、自分を労ることにだけは長けているわたしなので。

今日は疲れたし、チョイと早目に
電気を消してほら今フェードアウト
目をつぶってwas good dayならあとは見るだけええ夢

罰当の『was good day』から。

was good day(Remix)

was good day(Remix)

  • 罰当
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255


今日は真実なにもしていない。寝て、起きて、食べて、腹をさすりながらネットの波に乗って、寝て、おろしハンバーグを食べた。夜ご飯のあとには2杯分のアルコールを入れたのでいい具合に気分もいい。余談だが、アルコールパッチテストを試したところ、かけらも色が変わらなくて、今まで酒のせいにしてきた全てが自分のせいだということがわかってしまって凹んだ。閑話休題

最近、うまくやれないことが増えてきた。それも、仕方ない、と思っている。仕方ないでは何も買われないのかもしれないけれど、社会に出る前に、わたしはわたしに優しくする方法を覚えたい。

しかたない、と去っていく単位を見送って、洋裁を始めてみたりしている。

ミシンを誤って捨てられてしまったようなので、手縫いで始めた。中高で仕込まれたおかげで、裁縫はけっこう得意な方だ。

心が動いたものに手を伸ばすこと、が、弱った胸の内への1番の治療法であると思う。
余談だが、こころという言葉がすこし苦手だ。使うけれども、なんとなく、胡散臭くて。

5月に読んだ本のまとめ

1. 時計じかけのオレンジ 新装版

映画は未鑑賞。ディストピア的な世界観と音楽によって厚みを増す主人公の悪行がまるで歌劇のようだった。

"善良"の原因さえよくわかっていないくせに、その反対のことがわかるわけないだろう?

善というのは、選ばれるべきものなんだ。人が、選ぶことができなくなった時、その人は人であることをやめたのだ。

2.チーズと塩と豆と

再読。ご飯についてのお話の中では「タルト・タタンの夢」と並んでお気に入り。暮らすこと、愛することと切って離せない食についての短編集。もし誰かに本を贈る機会があれば候補に入れたい。

3.かもめのジョナサン

再読。人と違うことがこわくなったときに読む。

きみたちの全身は、翼の端から端までーーそれは目に見える形を取った、君たちの思考そのものにすぎない。


今月は全然読めなかった。大学が始まったから、同時並行は苦手。

荻原規子さんの描く恋の話

昨日からオンラインで授業が始まった。何かが始まる時の、なんとも言えぬ高揚と緊張はいつまでたっても苦手だし慣れない。隣の部屋からボサノヴァと「こころ」の音読が聞こえてくるのどかな日曜日は腹痛と共に幕を下ろして、ここ2日ははあんまり寝られなかった。

眠れない夜は特に、恋がしたいな、と思う。「日曜日の夜はベッドが広い」と歌ったのはEXILEのSomedayだったか、ひとり寝というのは別れた恋人がいてもいなくても少々寂しいものだ。

恋をするという楽しみを教わったのは本からで、そもそもなにもかも、言葉も心もなにもかもを本に習っているのだけれど(そのせいでいくつかの日本語のアクセントが可笑しい、本は発音までは教えてくれない)、その中でも特に荻原規子さんの小説が好きだった。「これは王国の鍵」「空色勾玉」「RDG」「セラフィールドの少女」小学2、3年生のころ夢中になって読みあさり、それからずっと本棚に揃えている。

荻原規子さんの小説の中で、彼女らはけっして恋を求めに行くわけじゃない。ただ必死に駆け抜けて、その途中でふと抱える気持ちに気づく。ボーイミーツガーツならぬ「ガールミーツボーイ」的なその作風がとても好きだ。目的としての恋ではなく、人に向ける気持ちの変化の先に恋があるのだと幼いわたしは胸を高鳴らせたものだった。

昔の方が、ずっと上手に人を好きになっていた気がする。

月と地球の金太郎飴/「時計じかけのオレンジ」

ところで、右耳に3個目、両耳で4個目のピアスをあけた。ピアスをあける、の、あ、が開なのか空なのかいつも迷ってしまう。穴を開ける、なので開なのだろうけど、イメージとしては空がむいている気もする。

ディムのやつだけは恒星や惑星やお月さんを、ぽかんと大口開いて見上げ、こんなものはじめて見つけた子供みたいに、いうのだ。
「あすこにゃ、誰がいるのかね?あんなとこに、何があるんだろね?」
(中略)
「あんなとこに、おまえ、行こうなんて思うんじゃねぇぞ。こことちっとも変わらねえんだよ、あそこもな。ナイフで刺されるやつもいりゃナイフを突き刺すやつもいるってもんだ。」
アントニイ・バージェス時計じかけのオレンジ

ピアスの穴は想像する時が一番美しいし、処女膜はなくなってから惜しくなる、青春は振り返って惜しむもので、虹の足はどこにもない。なんだって遠くにあるときがとっておきの宝石に見えるもので、けれどたどり着いてみればちっぽけで代わり映えのしないガラスにすぎないのだ。

こんなご時世であるので、他県のナンバーを携えた車を傷つける人がいるのだという。おいつめられてみれば「勤勉」「親切」を謳うひとたちもそんなもので、東洋の神秘を求めてやってきたマルコ・ポーロはがっかりしただろうなぁ、と思う。どこへ行ったって金太郎飴と同じ、刺す人間と刺される人間がいて傷つける人間と傷つく人間がいるのだ。

「PSYCHO-PASS GENESIS1」という衝撃の話

まだ1巻しか読めていないところで感想を書くのもいかがなものかとは思ったが、どうせこのブログは備忘録のようなものであるので気軽に綴ってみることにした。

人の心理状態や性格的傾向を計測し数値化した「PSYCHO-PASSサイコパス)」によって記録・管理された時代、というのがアニメ・小説・映画という多様な媒体で繰り広げられるPSYCHO-PASSという世界である。

これはアニメの1話から至極当然の前提として提示されるもので、その意義を考えることはあれど、どこか「そういうものだ」という納得を捨てきれずにいた。

捨てきれずにいたところで、この小説である。

PSYCHO-PASS GENESISは「GENESIS」つまり創世記の名の通り、シビュラシステムが導入される時代を描く。それを読み、愕然としたのだ。あくまでフィクションではあるが、私たちの世界からあくまで地続きの世界として、本シリーズの世界は作りあげられていた。

PSYCHO-PASSディストピア作品としての1面を、まざまざと見せつけられた気分だ。

他の記事で触れた「PSYCHO-PASS ASYLUM」はアニメの登場人物のスピンオフに近く、もちろん衝撃的でありひどく印象的な作品ではあったのだが、PSYCHO-PASSの世界を掘り下げることは目的とされていなかったと思う。

対して、「PSYCHO-PASS GENESIS」はPSYCHO-PASSの世界を掘り下げる小説なのだ。もちろん馴染みのある登場人物には親しみを感じるし、スピンオフとしても楽しめると思うのだが、それ以上に一個の小説であると感じる。

なんとかラストまでたどり着かなければ。劇場版のノベライズも机の上に積み上げられ読まれる時を待っているので。

愛することの話、「ナラタージュ」

話を聞き終えた彼は、そうかあ、となんだか一仕事終えた後のような表情を浮かべた。
「そんなふうに誰かを深く愛したことがあるなんて、俺には経験がないからうらやましいよ」
「愛していたとか、そんな大袈裟なものじゃないです。最初に会ったときなんか高校生だったし、まだ子供だったからよけいに、この人しかいないっていう思い込みが強かったんですよ」
「そうかな。年齢に関係なく愛したりはすると思うけど。工藤さん、きっとそれ、子供だったから愛とは違うとかじゃなくて、子供だったから、愛してるってことに気付かなかったんだよ」
島本理生ナラタージュ

ナラタージュでいっとう好きなシーンは映画ではカットされてしまった。残念ながら。

子どもだからわからない、という言葉が嫌いなのは、わたしが子どもだからなのだろうか。ティーンを通り抜ける寸前の今、少なくとも、大人たちよりはよく知っている。子どものころ、あんなにも感情は色濃く鮮やかだったということを。余計なものが混らないぶんきっと純度が高かった。薄く真新しいせいで指先を傷つける頁のように、わたしたちは鋭くしなやかに瞬間を生きていた。

愛することに向いた年齢というのはないと思っている。小学生の頃強く家族を愛し、中学生の頃切実に自分を愛し、高校生の頃すがるように友人を愛し、大学生のいま時に間違った人を愛して傷ついている。七つの少女がじょうずに好きなひとを愛することもあるし、七十の男性が知恵深く伴侶を愛することもある。だから面白いのだ。

感情には成熟があるけれど、優劣はない。幼いからといって愛せないわけじゃない。そうして後で振り返ってその感情に名前をつけるのだ。

慌ただしく通り過ぎた瞬間をたまに振り返って、いくつかに愛と名付ける営みを愛しく思う。

ナラタージュ (角川文庫)

ナラタージュ (角川文庫)

4月に読んだ本のまとめ

鬱々としていた日も多くあまり読めなかった。本が読めないとき、嗚呼メンタルが疲れているな、と思う。アニメPSYCHO-PASSの槙島も言う通り、本を捲ることは「精神的な調律」なので、紙の本への接し方で自分の調子は分かる気がする。

1.芥川龍之介/煙草と悪魔

青空文庫で無料で読める。日本に煙草をもたらしたのは宣教師に混じった悪魔であるという。寓話的なお話。

煙草と悪魔

煙草と悪魔

2.稲盛和夫/君の思いは必ず実現する

記事にした。京セラ社長の語る人生論。
「君の思いは必ず実現する」、転がる石の話 - はみだし者の国

3.大平健/診療室に来た赤ずきん

患者の物語を御伽噺になぞらえて紐解く精神科医のケース紹介。御伽噺に共通する要素の考察も興味深い。

愛の原義は「饋」すなわち食物の贈り物です。

4. 木下龍也/つむじ風、ここにあります

再読。記事にした。現代短歌の新進気鋭、木下龍也さんの歌集。
「つむじ風、ここにあります」、悼む権利の話 - はみだし者の国

つむじ風、ここにあります (新鋭短歌シリーズ1)

つむじ風、ここにあります (新鋭短歌シリーズ1)

  • 作者:木下龍也
  • 発売日: 2013/05/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

6.今野敏/清明 隠蔽捜査8

7.今野敏/蓬莱

今野敏にハマるきっかけになった三冊。とにかく面白くぐんぐん読める。武道にも通じた筆者なので暴力シーンの描写の細やかさも見所。

清明: 隠蔽捜査8

清明: 隠蔽捜査8

  • 作者:敏, 今野
  • 発売日: 2020/01/20
  • メディア: 単行本
エチュード (中公文庫)

エチュード (中公文庫)

  • 作者:今野 敏
  • 発売日: 2013/12/20
  • メディア: 文庫
蓬莱 新装版 (講談社文庫)

蓬莱 新装版 (講談社文庫)

  • 作者:今野 敏
  • 発売日: 2016/08/11
  • メディア: 文庫

8.矢作直樹/自分を休ませる練習

自分を休ませるためのエッセンスが詰まった本。さらっと読める。

9.吉上亮/PSYCHO-PASS ASYLUM1

10.吉上亮/PSYCHO-PASS ASYLUM2

アニメPSYCHO-PASS世界線の話。他作品のノベライズとは一線を画す濃密さ。筆者の筆力と、PSYCHO-PASSの世界観の精密さに唸らせられる。
記事にした。
善悪の再評価の話、「PSYCHO-PASS ASYLUM1」 - はみだし者の国

PSYCHO-PASS ASYLUM 2 (ハヤカワ文庫JA)

PSYCHO-PASS ASYLUM 2 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者:吉上 亮
  • 発売日: 2014/11/21
  • メディア: 文庫

11.アガサ・クリスティー/火曜クラブ

再読。かの安楽椅子探偵、ミスマープルの話。いつもながらその慧眼に胸がすく。

12.R=P=ファインマン/困ります、ファインマンさん

ノーベル賞受賞者である物理学者のファインマンさんの話の聞き書き。下記のブログで紹介されていたので読んだ。ブログは高校生の時からなんども読み返しているもの。
b.log456.com
原爆の製作にも関わった一人である彼の「科学の価値とはなにか」という講演も収録されており胸を打つ。英語版でもぜひ読みたいところ。

人はみな極楽の門を開く鍵を与えられているが、その同じ鍵は地獄の門をも開く。

13.吉本ばなな/キッチン

記事にした。大切な人を喪う、ということについての物語3つ。
「キッチン」、健全という暴力の話 - はみだし者の国

大丈夫、大丈夫、いつかはここを抜ける日がやってくる

キッチン

キッチン

14.金原ひとみ/蛇にピアス

記事にした。再読。自分の中で「かもめのジョナサン」と並んでバイブル的な本のうちの一冊。
ピアスという存在証明の話、「蛇にピアス」「刺青」 - はみだし者の国

俺は、人の形を変えるのは、神だけに与えられた特権だと思ってるから。

蛇にピアス (集英社文庫)

蛇にピアス (集英社文庫)



1984年」は読み終えていない。5月は授業が始まるけれど読書量は増やしたい。